解けないファッションの魔法
2004年、東京。
「死ぬまで、私は、ファッションデザイナーよ」。
30年以上仕事をして見慣れた六本木の街で、花井幸子は、ひとりつぶやく。21世紀の幕が開けたというのに、六本木を行き交う若い人たちの服装を観て、「だらしなくなった」ともいう。
花井幸子が独立してアトリエを構えた頃に較べ、ファッションデザインの幅は格段に広がっている。時代とともに変わってきた洋服と小物が、2000年を過ぎた今、再び変化の兆しが見えている。
衣食住を含め生活スタイルすべてが変わろうとしている今、花井幸子は、デザインのペースを落とすことなく創作活動に専念し、新しい時代を切り開こうとしている。失うことのないデザインへの情熱、それはファッションの神々が、豊かで上品な暮らしを願う花井幸子にかけた「解けないファッションの魔法」のようだ。
花井幸子のデザイナーとしてのゴールは、まだまだ、未来にある。